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障害のある子の親亡き後 成年後見人が担うお金の管理とは? 役割と具体的な手続き、親ができる準備

Tags: 成年後見制度, 財産管理, 親亡き後, 障害福祉, お金の管理

親亡き後、障害のあるお子様の生活を支える上で、お金の管理は重要な課題の一つです。将来にわたる生活費、医療費、施設利用料など、様々な費用を適切に管理し、お子様が安心して暮らせる環境を維持するためには、信頼できる仕組みが必要となります。

親御様世代が最も関心を寄せられる制度の一つに「成年後見制度」があります。この制度は、判断能力が十分でない方を保護し、支援するためのものですが、特に親亡き後のお子様の財産管理において、成年後見人がどのような役割を担うのか、具体的なイメージが湧きにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、親亡き後にお子様の成年後見人が選任された場合、その方がどのように財産を管理していくのか、具体的な手続きの流れや、親御様が元気なうちに準備できることについて解説します。

成年後見制度の基本的な役割と財産管理

成年後見制度は、精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方が、不利益を被らないように、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が、ご本人(被後見人)の財産管理や身上保護(生活、医療、介護などに関する法律行為)を行う制度です。

成年後見人の主な役割は以下の通りです。

このうち、親亡き後のお子様の生活を支える基盤となるのが「財産管理」です。成年後見人は、お子様(被後見人)の財産を守り、将来にわたって生活に必要な費用が確保できるよう、計画的かつ適正に管理する責任を負います。

成年後見人によるお金の管理:具体的な流れ

成年後見人が選任された後、実際にお金の管理はどのように進められるのでしょうか。一般的な流れは以下のようになります。

1. 財産の調査と把握

まず、お子様(被後見人)名義のすべての財産を把握します。

成年後見人は、これらの財産について調査を行い、財産目録を作成します。これは、家庭裁判所へ提出する重要な書類となります。

2. 収支の把握と管理

お子様の日々の生活にかかる収入と支出を正確に把握し、管理します。

成年後見人は、これらの収支を家計簿のような形式で記録し、定期的に家庭裁判所へ報告するための準備を行います。生活に必要な費用の支払いは、成年後見人がお子様のために行います。

3. 必要に応じた財産の処分等

お子様の生活や身上保護のために必要な場合、家庭裁判所の許可を得て、不動産などの大きな財産を売却することがあります。例えば、施設の入所費用や高額な医療費を賄うためなどです。このような重要な財産の処分は、成年後見人独自の判断では行えず、必ず家庭裁判所の許可が必要となります。

4. 財産目録・収支報告書の作成と家庭裁判所への報告

成年後見人は、定期的に(通常は1年に1回)、その期間に行った財産管理の状況を家庭裁判所へ報告する義務があります。これには、期首・期末の財産状況を示す「財産目録」や、1年間の収入と支出をまとめた「収支報告書」が含まれます。家庭裁判所はこれらの報告書をチェックし、成年後見人が適正に事務を行っているか監督します。

5. 通帳や印鑑、重要書類の管理

お子様名義の預貯金通帳、届出印、不動産の権利証、保険証書、年金証書などの重要書類は、原則として成年後見人が保管し管理します。お子様が自身で少額の金銭を管理できる場合は、その分を成年後見人から渡すといった対応も可能です。

親が元気なうちにできる準備

親御様が事前に準備をしておくことは、成年後見人が選任された後の財産管理を円滑に進める上で非常に役立ちます。将来、お子様の生活を支える成年後見人へ、必要な情報をスムーズに引き継ぐための準備を進めておきましょう。

1. お子様名義の財産の把握と整理

お子様名義でどのような財産があるのかを正確に把握し、リスト化しておきましょう。

これらの情報が整理されていると、成年後見人が財産調査を行う際に大変助かります。

2. お子様の収入・支出状況の記録

お子様の現在の収入源(年金の種類と金額など)や、定期的にかかる支出(施設利用料、サービス利用料、医療費など)を把握し、記録しておくと良いでしょう。1ヶ月あたり、1年間あたりでどのくらいの費用がかかるのか、概算でも分かると、将来の資金計画を立てる上で参考になります。

3. 利用している福祉サービス等の整理

現在利用している障害福祉サービスやその他の支援サービス、かかりつけの医療機関などを一覧にしておくと、成年後見人が身上保護を行う上で必要な情報を速やかに把握できます。サービスにかかる費用についても記録しておきましょう。

4. 後見人への引継ぎ事項の整理

お子様の生活習慣、好きなことや嫌いなこと、健康状態やアレルギー情報、服薬中の薬、これまでの経緯、そして親御様が大切にされてきたことや希望などを書き記しておくと、成年後見人がお子様の意思や状況を理解し、より良い身上保護を行う上で役立ちます。また、親族や関係機関とのネットワークについても伝えておくと良いでしょう。

5. 後見人候補者の検討

将来、お子様の成年後見人となる可能性があるのは、親族または弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職、あるいは社会福祉協議会などの法人後見です。親族に頼める方がいるか、専門職に依頼することを検討するかなど、早い段階から話し合ったり情報収集したりしておくと、いざという時の選択肢を落ち着いて検討できます。

成年後見制度利用の留意点

成年後見制度を利用するにあたっては、いくつかの留意点があります。

どこに相談すれば良いか

親亡き後のお子様の将来や成年後見制度について不安や疑問がある場合は、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが大切です。

これらの機関に相談することで、お子様に合った将来の支援のあり方や、成年後見制度を含む様々な選択肢について、具体的な情報を得ることができます。

まとめ

親亡き後、障害のあるお子様が安心して生活を送るためには、財産管理を含む将来の備えが不可欠です。成年後見制度は、お子様の財産を守り、計画的に管理するための有効な手段の一つとなります。

成年後見人は、家庭裁判所の監督のもと、お子様の財産状況を把握し、収入と支出を管理し、必要な支払いや手続きを代行します。これらの事務が適切に行われることで、お子様の生活に必要な費用が将来にわたって確保され、安心した暮らしにつながります。

親御様が元気なうちに、お子様の財産や収入・支出の状況を整理し、利用しているサービスなどの情報をまとめておくことは、将来成年後見人が選任された際に、スムーズな事務の開始と適切なお金の管理のために非常に役立ちます。

将来への不安を軽減するためにも、早めに情報収集を始め、必要に応じて専門機関に相談されることをお勧めします。お子様らしい豊かな生活が将来にわたって継続できるよう、今から一緒に考えていきましょう。