障害のある方の暮らしを支える日中活動サービスとは? 生活介護や就労支援の種類と利用方法
日中の活動は、生活の質を高める大切な要素です
障害のある方が地域で安定した生活を送る上で、日中の時間をどのように過ごすかは非常に重要です。日中の活動は、社会とのつながりを保ち、生活に規則正しいリズムをもたらし、心身の健康を維持することにも繋がります。
しかし、障害の種類や程度によっては、一人で日中を過ごすことが難しかったり、適切な活動の機会を見つけることが困難な場合もあります。このような課題に対し、障害者総合支援法に基づく様々な「日中活動系サービス」が用意されています。これらのサービスは、障害のある方の状態や希望に応じて、日中の活動の場や必要な支援を提供することを目的としています。
この記事では、主な日中活動系サービスの種類や内容、そしてサービスを利用するための一般的な流れについて分かりやすく解説します。
日中活動系サービスの種類と内容
障害者総合支援法には、障害のある方が日中の時間を安心して、かつ有意義に過ごせるよう支援するサービスがいくつかあります。ここでは、代表的なサービスをご紹介します。
生活介護
生活介護は、常に介護が必要な方に対して、日中における入浴、排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作的活動または生産活動の機会を提供するサービスです。主に重度の障害がある方が利用されることが多いサービスです。
- 対象者: 障害支援区分3以上の方(50歳以上の場合は区分2以上)。ただし、障害支援区分が非該当であっても、市町村の判断により利用できる場合があります。
- サービス内容:
- 入浴、排せつ、食事などの身体介護
- レクリエーションや創作的活動、生産活動の提供
- 生活等に関する相談・助言
- その他の必要な日常生活上の支援
生活介護事業所は、利用者の方々が安全かつ安心して日中を過ごせる場を提供し、日々の生活に変化や楽しみをもたらす活動を支援します。
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のある方に対して、就職に必要な知識や能力向上のための訓練を行うサービスです。原則として2年間という利用期間の上限があります。
- 対象者: 65歳未満で、一般企業への就職を希望する方。
- サービス内容:
- 適性や課題に応じた訓練(ビジネスマナー、パソコンスキル、コミュニケーション訓練など)
- 職場体験(企業での実習)の機会提供
- 履歴書の作成や面接対策などの就職活動支援
- 就職後の職場定着支援
就労移行支援は、働く意欲のある方が、それぞれのペースで就職に必要なスキルを習得し、企業で働くことを実現するためのサポートを行います。
就労継続支援
就労継続支援は、一般企業等での就労が困難な障害のある方に対して、働く場を提供するとともに、知識及び能力向上のために必要な訓練を行うサービスです。A型とB型の二つの形態があります。
- 対象者:
- A型(雇用型): 通常の事業所に雇用されることが困難な方であって、雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な65歳未満の方。
- B型(非雇用型): 通常の事業所に雇用されることが困難な方であって、就労の機会を提供されるとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、知識及び能力の向上により、将来的にA型や一般就労への移行を目指す方、または継続的な就労を希望する方。年齢制限はありません。
- サービス内容:
- 生産活動(作業など)の機会提供
- 働くことに関する知識や能力向上のための訓練
- 就労に関する相談・助言
就労継続支援A型では雇用契約が結ばれるため、最低賃金以上の賃金が支払われます。就労継続支援B型は雇用契約を結ばず、作業内容等に応じた「工賃」が支払われます。B型は、A型や一般就労への移行が難しい方でも、働く機会を得て社会参加や生きがいを見出す場となります。
その他の日中活動に関わるサービス
上記の他に、障害のある方が利用できるサービスとして、自立訓練(機能訓練、生活訓練)や地域活動支援センターなどがあります。これらは、地域での自立した生活や日中の居場所作りを支援するサービスです。
サービス利用までの流れ
日中活動系サービスを含む障害福祉サービスを利用するには、一般的に以下のような手続きが必要です。
- 市区町村の窓口に相談
- まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談します。サービスの概要や手続きについて説明を受けることができます。
- サービス等利用計画案の作成または提出
- サービスの利用申請には、「サービス等利用計画案」の作成が必要です。
- ご自身で作成することもできますが、多くの場合は「指定特定相談支援事業者」(以下「相談支援事業所」)に作成を依頼します。相談支援専門員が、ご本人やご家族の状況、希望、課題などを丁寧に聞き取り、適切なサービスの組み合わせを提案し、計画案を作成してくれます。
- 相談支援事業所の利用は、利用申請と同時に行うのが一般的です。相談支援事業所の利用自体にも、障害福祉サービス受給者証が必要になります。
- サービスの利用申請
- 市区町村の窓口に、サービス等利用計画案や申請書類を提出します。
- 障害支援区分の認定調査
- 申請後、市区町村の職員や委託を受けた調査員による認定調査が行われます。心身の状態や日中の活動の様子などについて聞き取り調査が行われ、コンピュータ判定及び医師の意見書に基づき、障害支援区分が認定されます。
- ※すでに障害支援区分が認定されている場合は、この調査は不要な場合があります。
- サービス等利用計画の作成
- 障害支援区分が認定されたら、相談支援事業所がサービス等利用計画案を完成させ、「サービス等利用計画」として市区町村に提出します。この計画に基づき、どのようなサービスをどのくらい利用するかが決定されます。
- 受給者証の交付
- サービスの利用が決定すると、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。この受給者証に記載されたサービスの種類や支給量(利用できる日数や時間など)の範囲でサービスを利用できます。
- 事業所との契約・利用開始
- 利用したいサービスを提供している事業所を選び、利用契約を結びます。契約後、サービスの利用が開始されます。
※手続きの流れは市区町村によって若干異なる場合がありますので、必ずお住まいの自治体にご確認ください。
サービス選択のポイントと相談先
日中活動サービスにはいくつかの種類があり、それぞれ対象者や提供される内容が異なります。どのサービスがご本人に適しているかは、その方の障害の状況、年齢、これまでの経験、そして何よりも「日中をどう過ごしたいか」「将来どうなりたいか」といった本人の希望や目標によって異なります。
サービスを選ぶ際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 本人の意向: ご本人がどのような活動に興味があるか、どのような場所で過ごしたいか、どのようなスキルを身につけたいかなどを最優先に考えます。
- 障害の状態: 必要な支援内容(身体介護の必要性、集団での活動への適応度など)に応じたサービス形態を選びます。
- 将来の目標: 就労を目指すのか、日中の居場所や活動の機会を得ることを目的とするのかなど、サービス利用によって何を実現したいかを明確にします。
- 事業所の雰囲気や内容: 見学や体験利用を通じて、事業所の雰囲気、提供される活動内容、職員の方の対応などがご本人に合っているかを確認することが大切です。
サービスの選択や手続きについて悩んだときは、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが重要です。
- 市区町村の障害福祉担当窓口: 制度全般に関する情報提供や、手続きの案内をしてくれます。
- 相談支援事業所: 障害福祉サービスの利用に関する専門家である相談支援専門員が、ご本人やご家族の状況を把握し、適切なサービスの組み合わせを提案してくれます。サービス等利用計画の作成を依頼することも含め、心強いパートナーとなります。
まとめ
障害のある方にとって、日中の活動は社会とのつながりを保ち、生活を豊かにするために欠かせない要素です。障害者総合支援法に基づく日中活動系サービスは、一人ひとりのニーズに応じた多様な選択肢を提供しています。
生活介護は常時の介護が必要な方の安心できる居場所と活動を、就労移行支援は一般就労へのステップアップを、就労継続支援は働く機会と訓練を提供します。これらのサービスを適切に利用することで、ご本人の可能性を広げ、より充実した地域生活を送ることが可能になります。
サービスの利用を検討される際には、まずは市区町村の窓口や相談支援事業所に相談し、専門家と一緒にご本人にとって最適な道を見つけていくことをお勧めします。制度を理解し、活用することが、障害のある方の「バリア解放」への一歩となるでしょう。