障害のある方の生活を豊かに 外出・移動支援サービスの種類と活用方法
障害のある方の生活を豊かに 外出・移動支援サービスの種類と活用方法
障害のある方が地域社会の一員としていきいきと生活するためには、外出や移動の機会が非常に重要です。しかし、外出や移動には様々な障壁が伴うことも少なくありません。公共交通機関の利用が難しかったり、一人での移動に不安があったりする場合、どのように地域と繋がり、活動の幅を広げていけば良いのでしょうか。
このような課題を解決し、障害のある方の外出や移動をサポートするための公的な制度があります。それが「外出・移動支援サービス」と呼ばれるものです。このサービスは、障害のある方が安全に、そして安心して外出できるよう、移動のサポートや外出先での必要な援助を提供するものです。
この記事では、障害のある方が利用できる主な外出・移動支援サービスの種類やサービス内容、そして実際にサービスを利用するまでの流れについて分かりやすくご説明します。これらのサービスを理解し活用することで、地域での活動範囲を広げ、より豊かな生活を送るための一助となれば幸いです。
外出・移動支援サービスとは
外出・移動支援サービスは、障害者総合支援法に基づく「地域生活支援事業」または「障害福祉サービス」として提供されています。その目的は、障害のある方が社会参加や地域生活を送る上で必要な外出や移動を支援し、生活の質の向上を図ることです。
これらのサービスを利用することで、通勤や通学、営業活動などを除く、様々な目的での外出が可能になります。例えば、買い物、通院、冠婚葬祭への出席、役所や銀行での手続き、レジャーや趣味活動への参加などが挙げられます。
サービスの提供形態は、原則としてガイドヘルパーと呼ばれる支援員が、障害のある方の移動に同行し、移動のサポートや外出先での必要な支援を行います。
主な外出・移動支援サービスの種類
外出・移動支援サービスには、いくつかの種類があります。対象となる方の障害の種類や程度、目的によって利用できるサービスが異なります。ここでは代表的なサービスを3つご紹介します。
1. 移動支援(地域生活支援事業)
- 概要: 市町村が行う地域生活支援事業の一つとして実施されるサービスです。障害のある方の社会参加や地域生活を目的とした外出の際に、移動をサポートします。
- 対象者: 障害者手帳をお持ちの方など、市町村が定める要件を満たす方。対象となる障害の種類(身体、知的、精神、難病等)は市町村によって判断が異なります。
- サービス内容: ガイドヘルパーが同行し、公共交通機関や徒歩などでの移動をサポートします。外出先での排泄や食事、着替えの介助なども含まれる場合があります。通勤や通学、営業活動など、「原則として本人の社会生活上必要不可欠な外出」とは判断されない場合でも、余暇活動や趣味、社会参加のための外出など、比較的多様な目的に利用しやすいのが特徴です。ただし、サービスの内容や利用できる範囲は、お住まいの市町村の判断によって異なりますので、必ず確認が必要です。
2. 同行援護(障害福祉サービス)
- 概要: 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。視覚障害により移動に著しい困難を有する方が、外出する際に利用できるサービスです。
- 対象者: 視覚障害により、移動に著しい困難を有する方で、厚生労働省令で定める基準に該当する方。具体的には、視力や視野などの基準があります。
- サービス内容: 移動に必要な情報の提供(代筆・代読を含む)、移動の援護(目的地までの誘導、安全確保)、外出先での必要な援助を行います。移動支援と異なり、通勤や通学に利用できる場合があります(支給決定時の市町村の判断による)。
3. 行動援護(障害福祉サービス)
- 概要: 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。知的障害や精神障害により、行動上の著しい困難がある方が、行動する際に生じうる危険を回避するために利用できるサービスです。
- 対象者: 知的障害または精神障害があり、行動上の著しい困難を有する方で、厚生労働省令で定める基準(障害支援区分が区分3以上であり、行動関連項目に一定の点数がつくことなど)に該当する方。
- サービス内容: 行動する際に生じうる危険を回避するための援助、外出時における移動中の介護や危険回避のための援助を行います。パニックを起こしやすい方や、状況判断が難しく危険な行動をとってしまう可能性がある方などが、安全に外出するために利用されます。
サービス利用までの流れ
外出・移動支援サービスを利用するためには、お住まいの市区町村への申請が必要です。一般的な流れは以下のようになります。
1. 申請
まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談し、サービス利用の申請を行います。申請書を提出する際に、サービス利用の希望や現在の状況などを伝えます。
2. 調査・認定(障害福祉サービスの場合)
同行援護や行動援護などの障害福祉サービスを申請した場合、市区町村の担当者による聞き取り調査が行われます。心身の状況や生活環境、サービスの利用意向などが確認されます。この調査結果や医師の意見書などに基づき、障害支援区分(サービスの必要度を示す区分)が認定されます。移動支援(地域生活支援事業)の場合は、この障害支援区分の認定は不要な場合が多いですが、市町村独自の基準でサービスの必要性が判断されます。
3. サービス等利用計画案の作成
サービスの支給決定を受けるためには、「サービス等利用計画案」の作成が必要です。これは、どのようなサービスを、どのくらいの頻度や時間利用したいか、どのような目標をもってサービスを利用するのかなどを具体的に記載した計画です。 ご自身やご家族で作成することも可能ですが、多くの場合、「指定特定相談支援事業所」に作成を依頼します。相談支援専門員が、障害のある方やそのご家族の意向を聞きながら、適切なサービスの組み合わせや利用計画について一緒に検討してくれます。
4. 支給決定
市区町村は、申請内容、調査結果(障害支援区分)、サービス等利用計画案などに基づいて、サービスの支給の可否や支給量(利用できる時間数など)を決定します。支給が決定すると、「受給者証」が交付されます。
5. サービス提供事業所との契約
受給者証が交付されたら、実際にサービスを提供する事業所(ヘルパーステーションなど)を選び、利用契約を結びます。サービス利用計画に基づいて、具体的なサービスの提供日時や内容を調整します。
6. サービス利用開始
契約が完了すれば、サービスの利用を開始できます。
サービス利用上の留意点
- 利用範囲: 前述の通り、通勤・通学や営業活動など、社会生活上必要不可欠とみなされない外出には原則として利用できません。ただし、個別の状況や市町村の判断により異なる場合があります。
- 自己負担: サービス利用にかかる費用の1割が原則自己負担となりますが、世帯の所得に応じて上限額が定められています(負担上限月額)。上限額を超えた分は自己負担がありません。また、生活保護受給世帯や低所得世帯は自己負担がゼロとなる場合があります。地域生活支援事業である移動支援の自己負担額は、市町村によって異なる場合があります。
- 時間制限: 支給決定された時間数や回数の範囲内での利用となります。
どこに相談すれば良いか
外出・移動支援サービスの利用について詳しく知りたい、申請手続きを進めたいという場合は、まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談してください。 また、サービス等利用計画の作成や、他の障害福祉サービスも含めた相談をしたい場合は、「指定特定相談支援事業所」に相談することができます。相談支援専門員が、様々なサービスの組み合わせや利用方法について丁寧にアドバイスしてくれます。
まとめ
外出・移動支援サービスは、障害のある方が地域社会と繋がり、活動の幅を広げ、より豊かな生活を送るための重要な支援制度です。移動支援、同行援護、行動援護など、対象者や目的に応じて様々なサービスがあります。
これらのサービスを適切に活用するためには、まずはお住まいの市区町村の窓口や相談支援事業所に相談し、ご本人やご家族の状況に合ったサービスについて情報収集することが大切です。一人で抱え込まず、専門機関のサポートを得ながら、安心して地域での暮らしを続けていくための方法を探していきましょう。