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重度障害のある方が地域で安心して暮らすための訪問系サービス(重度訪問介護など)とは? 利用のステップと活用のポイント

Tags: 障害福祉サービス, 訪問系サービス, 重度訪問介護, 居宅介護, 地域生活支援, 親亡き後, 相談支援事業所, サービス等利用計画

はじめに:地域で暮らし続けるための大切な選択肢「訪問系サービス」

ご家族に重度障害のある方がいらっしゃる場合、将来にわたり住み慣れた自宅や地域で安心して暮らし続けるためには、様々な支援をどのように活用していくかが重要な課題となります。特に、親御さんが高齢になられたり、将来的に十分な支援ができなくなったりする場合を見据え、外部のサービスによるサポート体制を築くことが大切です。

障害福祉サービスには、自宅や地域での生活を支えるための「訪問系サービス」があります。これらのサービスは、生活援助や身体介護、外出支援など、日常生活に必要な様々なサポートを専門の事業所から派遣されるヘルパーなどが提供するものです。重度障害のある方の場合、特に「重度訪問介護」などが重要な役割を担います。

この記事では、重度障害のある方が地域で安心して暮らすための訪問系サービス、特に重度訪問介護を中心に、そのサービス内容や利用方法、そして親亡き後を見据えた活用のポイントについて解説します。

障害福祉サービスにおける「訪問系サービス」とは?

障害福祉サービスには、障害のある方が自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、様々なサービスが用意されています。その中で「訪問系サービス」は、主に障害のある方の自宅や地域において、訪問により提供されるサービスの総称です。

自立支援給付の「介護給付」に含まれる訪問系サービスには、主に以下の種類があります。

これらのサービスは、障害のある方がご自身のライフスタイルに合わせて、住み慣れた環境で生活を継続するために不可欠な支援です。

重度障害のある方にとって特に重要な「重度訪問介護」

重度訪問介護は、重度の障害により常時介護が必要な方のために設計されたサービスです。多くの時間帯にわたる継続的な支援が可能であり、自宅での生活を維持する上で中心的な役割を果たします。

重度訪問介護の対象者

主に以下のような方が対象となります。

重度訪問介護のサービス内容

サービスの範囲は幅広く、利用者の個別の状況に合わせて計画されます。主な内容は以下の通りです。

これらのサービスを、利用者の状況やサービス等利用計画に基づき、長時間にわたって提供することが可能です。これにより、家族の介護負担を大幅に軽減し、利用者ご自身の生活の質を高めることができます。

訪問系サービスを利用するためのステップ

訪問系サービスを利用するためには、以下のステップを踏むのが一般的です。

  1. 相談: まずは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や、指定特定相談支援事業所に相談します。専門の相談支援専門員が、ご本人やご家族の状況、希望する生活、必要な支援について丁寧に聞き取り、利用できるサービスや制度について情報提供を行います。

    • ポイント: 相談支援事業所は、サービス利用計画の作成を代行してくれる重要なパートナーです。複数の事業所を比較検討し、信頼できる事業所を見つけることが大切です。
  2. 申請: 市区町村の障害福祉窓口に、障害福祉サービスの利用申請を行います。

  3. 障害支援区分認定: 心身の状態に関する80項目のアセスメント調査や医師意見書に基づき、障害支援区分(区分1~6)が認定されます。この区分によって、利用できるサービスの種類や支給量(サービスを利用できる時間や日数など)の目安が決まります。

  4. サービス等利用計画案の作成: 相談支援専門員が、区分認定の結果やご本人・ご家族の意向を踏まえ、どのようなサービスをどのように利用するかという「サービス等利用計画案」を作成します。ご家族の状況(親の高齢化など)や将来の意向をしっかり伝えましょう。

  5. 支給決定・受給者証の交付: 市区町村がサービス等利用計画案の内容などを確認し、サービスの支給を決定します。決定後、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。

  6. サービス事業所との契約: 利用したいサービスを提供する事業所を選び、契約を結びます。事業所選びにあたっては、サービスの質や提供体制、緊急時の対応などを確認することが重要です。必要に応じて、複数の事業所から話を聞き、比較検討しましょう。

  7. サービス等利用計画の作成・サービス利用開始: サービス事業所がサービス担当者会議などを経て、具体的な「サービス等利用計画」を作成します。この計画に基づき、サービスの利用が開始されます。

訪問系サービス活用の留意点とポイント

訪問系サービスを効果的に、そして将来にわたって安心して利用するためには、いくつかの留意点があります。

費用について

訪問系サービスを含む障害福祉サービスの利用にかかる費用は、サービスの種類や利用時間、本人の所得などによって異なります。原則として費用の1割を負担しますが、所得に応じてひと月あたりの負担上限額が定められています(利用者負担上限月額)。また、様々な軽減制度(高額障害福祉サービス等給付費など)もあります。費用の詳細については、市区町村の窓口や相談支援事業所に確認してください。

まとめ:安心した地域生活のために、今からできること

重度障害のある方が、住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らし続けるためには、訪問系サービス、特に重度訪問介護の活用が非常に有効な手段となります。サービスの利用は、ご本人だけでなく、長年介護を担ってきたご家族の負担を軽減し、休息の時間(レスパイト)を確保することにもつながります。

サービスの利用を検討する際には、まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口や、信頼できる相談支援事業所に相談することから始めてください。そこで、ご本人やご家族の状況に合ったサービスの種類や量、具体的な利用方法についてアドバイスを得ることができます。

特に、親御さんが元気なうちに、サービス利用計画に将来の希望や不安をしっかりと反映させること、信頼できる事業所を見つけること、そして親亡き後を見据えた情報共有や連携体制を構築しておくことが、将来の安心へとつながります。

訪問系サービスは、単なる介護や支援を提供するだけでなく、地域社会とのつながりを維持し、本人の生活の質を高めるための重要な柱となります。将来への漠然とした不安を抱え込まず、まずは相談という第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。適切な支援を活用することで、ご本人もご家族も、より安心した日々を送ることができるはずです。