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障害のある成人した子の「親亡き後」の住まい:選択肢ごとの費用、手続き、検討ポイント

Tags: 障害のある子, 親亡き後, 住まい, グループホーム, 入所施設, 障害福祉サービス, 費用, 検討ポイント

はじめに

大切なご家族である障害のあるお子さんが成人を迎えられた後、親御様が抱える不安の一つに「自分たちが高齢になったり、もしものことがあったりした際、この子はどこでどのように暮らすのだろうか」という住まいに関する将来への懸念があるかと思います。

障害のある方が安心して暮らせる住まいには、いくつかの選択肢があり、それぞれに特徴や利用にかかる費用、手続きが異なります。「何から考えれば良いのか分からない」「費用はどれくらいかかるのだろうか」「どこに相談したら良いのか」といった疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、障害のある成人したお子さんが「親亡き後」も地域で安心して暮らし続けるための住まいについて、主な選択肢とその特徴、利用にかかる費用、手続き、そしてご家族が検討すべきポイントを分かりやすく解説します。将来の安心のために、ぜひ情報収集の一助としていただければ幸いです。

親亡き後を見据えた住まい選びの重要性

親御様が元気なうちに、お子さんの将来の住まいについて検討を始めることは、いくつかの重要な意味を持っています。

障害のある成人した子の住まいの主な選択肢

障害のある成人した方が暮らす住まいには、主に以下のような選択肢があります。

1. グループホーム(共同生活援助)

障害のある方が、数人のグループで共同生活を営む住居です。世話人や生活支援員による食事や入浴、生活に関する相談などの支援を受けながら、地域の中で自立した暮らしを目指します。

2. 入所施設(施設入所支援)

障害のある方が、施設に入所して生活する場です。日中の介護や支援(生活介護や自立訓練など)と夜間の居住支援を一体的に受けることができます。

3. 地域での一人暮らし・ケア付き賃貸住宅など

障害特性や必要な支援内容によっては、重度訪問介護などの居宅介護サービスや、その他の地域生活支援事業を活用しながら、一人暮らしやケア付きの賃貸住宅で暮らすという選択肢もあります。

4. 親族との同居

親御様が健在なうちは最も一般的な形ですが、「親亡き後」を見据えた場合、兄弟姉妹など他の親族との同居も選択肢の一つとなり得ます。ただし、親族に過度な負担をかけることのないよう、十分な話し合いと公的な支援(居宅介護など)の活用が不可欠です。

各選択肢にかかる費用について

住まいにかかる費用は、主に以下の要素で構成されます。

これらのうち、障害福祉サービス費用については、所得に応じて負担上限額が設定されており、それを超える部分は公費で負担されます。また、同じ月に利用した障害福祉サービスとその他のサービス費用の合算額が高額になる場合は、高額障害福祉サービス等利用費として償還払いされる制度があります。

費用に関する一般的な目安(地域やサービス内容により大きく変動します)

親御様が検討されている地域にある具体的な事業所や施設の費用については、必ず問い合わせて確認することが重要です。また、障害年金や生活保護など、お子さんの収入や利用できる制度も費用計画に含めて考える必要があります。

各選択肢の利用手続きについて

障害福祉サービスを利用してグループホームや入所施設、地域での支援を受けるためには、まず市区町村の障害福祉課の窓口で相談し、手続きを進める必要があります。一般的な流れは以下の通りです。

  1. 相談: 市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所に、住まいに関する悩みや希望を相談します。
  2. 申請: 障害福祉サービスの利用申請を行います。
  3. 障害支援区分の認定調査: 心身の状況に関する調査を受け、障害支援区分が認定されます。
  4. サービス等利用計画案の作成: 相談支援事業所が、本人の希望や状況に基づき、利用するサービスの種類や量を盛り込んだ「サービス等利用計画案」を作成します。
  5. 支給決定: 市区町村が、認定された障害支援区分やサービス等利用計画案に基づき、利用できるサービスの種類や量を決定し、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
  6. 事業所との契約: 受給者証に記載されたサービスを利用するため、希望するグループホームや入所施設、居宅介護事業所などと契約を結びます。
  7. 利用開始: 契約に基づき、サービスの利用を開始します。

グループホームや入所施設の場合、事前の見学や体験入所を経て、施設側との面談などがあることが一般的です。空き状況も変動するため、複数の事業所にあたることが必要になる場合もあります。

住まい選びの検討ポイント

お子さんにとって最適な住まいを選ぶためには、様々な角度から検討が必要です。

親ができる準備

親御様が元気なうちに、お子さんの将来の住まいについて準備できることはたくさんあります。

どこに相談すれば良いか

障害のあるお子さんの住まいに関する相談は、以下の窓口で行うことができます。

まとめ

障害のある成人したお子さんの「親亡き後」の住まいについて考えることは、ご家族にとって大きな課題であり、不安を伴うこともあるかもしれません。しかし、地域にはグループホームや入所施設、その他の多様な支援を活用した住まい方の選択肢があります。

大切なのは、早い時期から情報収集を始め、お子さんの意思を尊重しながら、ご家族だけで抱え込まずに専門機関に相談することです。相談支援事業所や市区町村の窓口は、住まいだけでなく、必要なサービスや将来の生活設計について、ご家族と一緒に考えてくれる心強い味方となります。

この記事が、お子さんの将来の住まいについて考え始めるきっかけとなり、少しでも安心へと繋がる一助となれば幸いです。